気づき——自分の心に目を向ける力

仏教には「不忘念(ふもうねん)」という言葉があります。

文字通りには「気づきを忘れない」という意味です。今この瞬間に、自分の心や身体で何が起きているのかを見失わずにいること。それは修行の基本であり、また日々を穏やかに生きるための大切な力でもあります。

私たちは忙しさの中で、自分の気持ちを後回しにしがちです。疲れているのに無理をする。不安を抱えたまま、人にきつい言葉を返してしまう。そうしたことは、しばしば「気づかないまま」に起きています。

しかし、心の動きに気づけるようになると、少しずつ変化が生まれます。

今、自分は焦っている。 今、自分は傷ついている。 今、自分は守りに入っている。

そう気づくだけで、反応の仕方はやわらぎます。

仏道の実践とは、特別な世界に入ることではありません。朝起きた時、仕事で失敗した時、家族と話す時。そうした身近な場面の中で、自分の心に気づくこと。その積み重ねが、自分を整える道になっていきます。

変わるためには、まず気づくこと。

その静かな一歩を、今日も大切にしたいものです。

合掌